
外国人介護人材の受入れ制度は、名前だけで選ぶと、採用後に必要な教育や手続きの違いを見落としがちです。このページでは、現在の主な4制度を同じ項目で比較し、育成就労への移行も含めて、施設が検討する順番を整理します。
この記事で分かること
- 特定技能・在留資格「介護」・EPA・技能実習の目的と受入れ条件の違い
- 働ける期間、必要な資格・日本語、支援・教育体制の比較
- 2027年4月1日施行予定の育成就労を、採用計画でどう扱うか
- 自施設と候補者に合う制度を絞るための確認手順
結論:採用時の資格と、育成・支援に使える体制で比較する
外国人介護人材の制度選びでは、候補者が介護福祉士資格を持っているか、就労に必要な技能・日本語要件を満たすか、施設がどの教育・支援を担えるかを比べます。特定技能は人手不足への対応、在留資格「介護」は介護福祉士としての就労、EPAは協定に基づく資格取得支援、技能実習は技能移転という違いがあります。2026年9月現在、育成就労は施行前です。費用だけで決めず、希望する就労開始時期と業務、本人のキャリアも合わせて判断しましょう。[1][2][3][4][5]
現在の主な4制度を比較する
ここでの「制度」は、在留資格だけでなくEPAという受入れの枠組みも含めた呼び方です。EPA候補者等の在留資格は「特定活動」であり、「EPA」という名前の在留資格ではありません。また、永住者など、就労活動に制限のない在留資格で介護現場に働く方もいます。本表は厚生労働省が示す主な4つの受入れ経路の比較です。[1][16]
横にスクロールできます。期間は通算の目安と個々の在留期間を区別して読んでください。
| 制度・経路 | 目的・対象 | 資格・日本語の主な確認点 | 就労・実習期間の考え方 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号「介護」 | 人手不足に対応するため、一定の技能を持つ人を受け入れる。 | 原則、介護技能評価試験、介護日本語評価試験と、JFT-BasicまたはJLPT N4以上。経歴により試験免除あり。[2] | 原則、通算5年。介護福祉士国家試験の結果等に応じた最長1年の延長措置がある。全員が延長できるわけではない。[6][7] |
| 在留資格「介護」 | 介護福祉士として介護・介護の指導を行う。 | 介護福祉士資格と雇用契約等を確認。資格を取得したルートを問わず対象となる。[3][8] | 許可される期間は5年・3年・1年・3月。更新回数に上限はないが、更新手続きと審査は必要。[6][8] |
| EPA介護福祉士候補者 (就労コース) | インドネシア・フィリピン・ベトナムとの枠組みで、働きながら国家資格取得を目指す。 | 国別の応募資格・日本語研修等を確認。受入れはJICWELSを通じた公的な調整による。[4] | 候補者は原則4年。インドネシアは2026年8月の改正日尼EPA発効等により上限5年へ延長。資格取得後は更新回数の制限なく就労可能。[4] |
| 技能実習「介護」 | 日本で学んだ技能を母国へ移転するための実習。 | 1号は原則N4相当、2・3号は原則N3相当。2号には一定の日本語学習要件による特例がある。技能実習計画等の認定が必要。[9] | 1~3号を通じ最長5年の仕組み。ただし段階ごとの要件があり、今後の3号移行等は育成就労施行時の経過措置も確認する。[10][11] |
比較表を読むときの注意
- 「5年」は、その施設で5年間働く保証ではありません。特定技能では、候補者がすでに同資格で在留していた期間も確認します。
- 日本語試験の合格と、現場での対応力は分けて確認します。記録、申し送り、利用者への説明などは採用面接や入職後の指導でも確認しましょう。
- EPAは候補者と資格取得後で扱いが異なります。受入れ年度・国別の募集要項も確認します。
- 在留資格「介護」の更新は自動ではありません。「更新回数に制限がない」ことと「手続き不要」は別です。
特定技能1号の期間延長は、5年の通算在留期間に達する前の最終年度の国家試験で全パートを受験し、1パート以上の合格と合格基準点の8割以上の得点を得ることなどが条件です。本人の翌年度受験の意思、事業者と作成する学習計画、所定の確認・申請手続きも必要です。採用時から延長を確約せず、対象年度の案内を確認してください。[7]
育成就労は「これから始まる制度」として分けて考える
育成就労は2027年4月1日施行予定です。技能実習を発展的に解消し、原則3年間の就労で特定技能1号水準の人材を育成・確保する仕組みです。2026年9月時点の就労を育成就労として開始することはできません。準備・申請と、制度による実際の就労開始を区別します。[5]
横にスクロールできます。以下は施行前の公表内容です。
| 確認する項目 | 公表されている方向・要件 | 施設が準備すること |
|---|---|---|
| 育成の目標 | 3年間で特定技能1号水準へ。自動的に特定技能へ移るわけではない。[5] | 本人の希望、段階ごとの学習・技能評価、移行手続きを計画する。 |
| 介護分野の日本語 | 入国時の要件は日本語教育の参照枠A2.2。2年目以降の学習プラン、終了時の介護日本語評価等も定められている。[12] | 全分野共通の説明だけで判断せず、介護固有の要件で教育を組む。 |
| 事業所・指導体制 | 対象事業所、受入れ人数枠、育成就労指導員等に固有要件がある。[12] | 施設の開設状況、常勤介護職員数、指導担当者を確認する。 |
| 監理・協議会 | 監理支援機関による監理の仕組み。受入れ法人は計画認定申請等の前に協議会加入と所定の証明書が必要。[5][12] | 現在の監理団体の名称だけで判断せず、新制度の許可・対応状況を確認する。 |
技能実習生が一斉に育成就労へ切り替わるわけではない
施行時点で実習中の人などには、引き続き技能実習を行うための経過措置があります。施行前に申請した計画で新たに開始する場合や、技能実習3号へ進む場合には、それぞれ条件が異なります。入管庁・厚労省の経過措置資料は、技能実習から育成就労への在留資格変更はできないことも示しています。現在雇用している方の計画認定日、実習開始日、実習段階を個別に整理してください。[11]
事業者の支援・教育と費用はどう違う?
制度名だけで「費用が安い順」に並べると、施設内で担う教育や生活支援の負担を見落とします。次の表を使い、外部に支払う金額と、施設職員が担う業務を一緒に比較してください。
横にスクロールできます。費用欄は見積もり時の確認項目で、全国一律の料金や必ず発生する費用を示すものではありません。
| 経路 | 支援・教育で確認すること | 見積もりで分ける項目 |
|---|---|---|
| 特定技能 | 1号特定技能外国人への支援が必要。自社の実施体制や登録支援機関への委託を確認する。[13] | 採用・紹介、申請、住居準備、支援委託、日本語・資格学習。 |
| 在留資格「介護」 | 特定技能1号の支援枠組みとは異なる。現場教育・相談窓口は別途設計する。[8][13] | 採用・紹介、住居や転居、現場研修、継続教育。 |
| EPA候補者 | 受入れ施設による日本語・国家試験の学習支援を確保する。JICWELSが唯一の受入れ調整機関。[4] | 年度の受入れ案内にある費用、研修、学習時間の確保、住居。 |
| 技能実習 | 実習計画、指導・生活相談体制、団体監理型では監理団体による監理を確認する。[9][17] | 監理、講習、技能評価、日本語学習、住居、移行手続き。 |
見積書は、初期費用・毎月の費用・必要時の追加費用に分けて比較しましょう。「支援に含まれる業務」「施設側に残る業務」「契約終了時の条件」も書面にすると、金額だけでは見えない違いが分かります。
候補者の賃金を低く抑えるために制度を選ぶ考え方は適切ではありません。雇用条件を本人が理解できるよう説明し、同じ職務・責任を担う職員との整合性も確認します。
自施設に合う制度を絞る5つの手順
以下は、公的要件を施設の採用計画に落とし込むための実務上の整理です。制度の適用可否を自動判定するものではありません。
- 配置する業務と時期を決める。施設介護か訪問系か、夜勤の有無、勤務開始の希望月を整理します。制度だけでなく、実際の業務に必要な条件まで確認します。
- 候補者の現在地を確認する。介護福祉士資格の有無、在留資格と残りの期間、試験結果、実務経験、本人の希望を確認します。国籍だけで経験や適性を推測しないことが大切です。
- 条件に合う経路を比較する。資格保有者なら在留資格「介護」、技能・日本語要件を満たす人なら特定技能などを検討します。EPAは募集時期と施設の研修体制を、技能実習・育成就労は制度趣旨と移行時期を踏まえます。
- 受入れ要件と担当者を確認する。対象事業所、人数枠、協議会、指導者、支援の分担を整理します。例えば特定技能の介護分野では、在留申請前に協議会の構成員となり、受入れ事業所情報が登録された入会証明書を得る必要があります。[2]
- 総費用と育成計画をそろえて決める。採用から勤務開始、現場教育、生活支援、資格取得までを同じ期間・同じ項目で比較し、本人にも説明します。
相談前に用意しておくとよい情報
- 施設・事業所のサービス種別、所在地、希望業務
- 採用予定人数、常勤介護職員数、希望開始時期
- 候補者がいる場合、その資格・試験・在留状況
- 指導担当者、日本語学習、住居・生活相談の体制
- 現在の監理・支援契約と、見直したい費用・対応内容
制度比較で起こりやすい判断の間違い
「特定技能なら採用直後から何でも任せられる」
試験等で確認される能力と、その施設の利用者・記録方法・緊急時対応への習熟は別です。採用時点の経験に応じ、現場教育と担当業務を設計しましょう。
「技能実習・特定技能では訪問介護ができない」
この説明は現在の制度を反映していません。技能実習は2025年4月1日、特定技能は同年4月21日から、所定の研修・経験や事業所の措置等を満たせば訪問系サービスに従事できるようになりました。要件確認・適合確認等を経ずに配置してよいという意味ではありません。[14]
「技能実習なら転籍は絶対に起こらない」
技能実習にも、やむを得ない事情がある場合の実習先変更の仕組みがあります。転籍制限を定着の代わりに考えず、本人の相談を受け止める体制と適切な労働条件を整えましょう。[15]
「長く働いてもらうには、同じ在留資格を維持すればよい」
介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」へ移るなど、本人のキャリアに応じて適切な資格・手続きが変わります。取得ルートにかかわらず対象となる制度であることを踏まえ、学習と申請を計画してください。[3][8]
よくある質問
Q. 初めてなら、特定技能を選べば間違いありませんか?
A. 一律には決められません。候補者の資格、業務、採用時期、施設の支援体制で適した経路が変わります。まず候補者と事業所の要件を満たすかを確認し、費用と教育の分担を比較してください。
Q. 特定技能の日本語要件はN4だけですか?
A. 原則として、JFT-BasicまたはJLPT N4以上に加え、介護日本語評価試験への合格も必要です。介護技能評価試験も別にあります。介護職種の技能実習2号を良好に修了した場合など、免除される経路があるため、本人の経歴を確認します。[2]
Q. 在留資格「介護」は、日本の養成施設を卒業した人だけですか?
A. いいえ。2020年4月から、実務経験を経て介護福祉士資格を取得した方も移行対象です。介護福祉士資格の取得ルートだけで対象外と判断しないでください。[3][8]
Q. 育成就労は、技能実習と名前だけが変わるのですか?
A. いいえ。人材育成と人材確保を目的とする新制度で、計画や監理支援機関、本人意向による転籍等の仕組みも確認が必要です。現行の技能実習計画をそのまま育成就労へ読み替えることはできません。[5][11][12]
Q. EPA候補者の採用を一般の人材紹介会社へ依頼できますか?
A. EPA候補者の受入れ調整はJICWELSが担い、他の職業紹介事業者等に候補者のあっせんを依頼することはできません。EPAとして受け入れる場合は、JICWELSの募集・手続きに沿って確認してください。[4]
関連ページ
制度以外も含めて採用・受入れの全体像を確認したい方は、外国人介護人材 完全ガイドをご覧ください。
制度を比較しても判断に迷う場合は、候補者の状況と施設の希望を整理して、下の電話・フォームからご相談ください。
出典・確認資料
確認日:2026年9月26日。制度の事実は以下の公的資料に基づき、施設での比較手順・見積もりの整理方法は実務上の提案として記載しています。古い概要資料より、個別制度の改正通知・現行案内を優先しています。
- [1] 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」
- [2] 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」— 試験・免除経路、協議会。
- [3] 厚生労働省「介護福祉士資格を取得した外国人の方に対する在留資格「介護」の付与について」
- [4] 厚生労働省「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」— インドネシアの2026年8月の期間変更を含む。
- [5] 厚生労働省「介護分野における育成就労制度について」— 2027年4月1日施行予定。
- [6] 出入国在留管理庁・特定技能総合支援サイト「在留資格「特定技能」とは」「よくある質問」— 原則の通算期間、在留資格「介護」の更新。介護の延長措置は[7]を優先。
- [7] 厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格による通算在留期間の延長に関する措置」および概要資料(PDF) — 2026年3月30日改正通知掲載。
- [8] 出入国在留管理庁「在留資格「介護」」— 資格取得ルート、在留期間、申請。
- [9] 厚生労働省「介護職種の技能実習に関する基準等(平成29年厚生労働省告示第320号・改正後本文)」— 日本語要件と附則の特例。
- [10] 外国人技能実習機構「技能実習生手帳(PDF)」— 1~3号の段階。移行期の扱いは[11]を優先。
- [11] 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度の施行に伴う技能実習の経過措置について(PDF)」、入管庁「育成就労制度Q&A」
- [12] 厚生労働省「介護分野の育成就労における固有要件について(PDF)」— 施行前に公表された介護固有の要件。
- [13] 出入国在留管理庁・特定技能総合支援サイト「会社から受けられる支援」
- [14] 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
- [15] 外国人技能実習機構「やむを得ない事情がある場合の実習先変更」
- [16] 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
- [17] 外国人技能実習機構「技能実習制度運用要領」
最終確認日:2026年9月26日
更新履歴:2026年9月26日:制度比較の初版を作成。
施行前の制度と現行制度を区別して掲載しています。個別の受入れ・申請前には、該当する公的窓口の最新案内も確認してください。
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